第4章 電力自由化と再生可能エネルギー

電力自由化は再エネにとってプラス

1)系統(送電線)の広域運用、2)電力自由化、3)発電と送配電、小売の分離という電力システム改革の三つの要素は、再生可能エネルギーにとっては基本的にプラス、拡大普及の大きな後押しになるものです。

たとえば系統の広域運用は、図9のように小さな丸で示された、エリアを限定された既存電力会社の送電網をつなぎ合わせ、広く日本全体で運用することです。これまでは、北海道電力管内での需給調整ではもう限界とされていた風力発電も、関東や関西の大きな需要をテコに一気に開発することが可能になります。

一般家庭まで「電気を選べる」という「完全自由化」は、再生可能エネルギー電気への需要を高め、その普及を後押しするでしょう。発電と送配電、小売の分離は発電コストの透明性を高め、巨大事故や放射性廃棄物の処理などをかかえる原子力発電のようにリスクの高い発電方式の退場を促すでしょう。

図9 送電網(系統)の広域運用

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再生可能エネルギーの連系拒否に先手を打った既存電力

ところが昨年(2014年)の秋、太陽光発電の設備認定量が限界になったと、北海道電力、東北電力、北陸電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力の7つの大手電力が系統への接続を拒否しました。その結果、2015年から広域運用の開始が決まっているにも関わらず、政府WG(ワーキングチーム)で「接続可能量」なるものが定められ、この7大手電力管内では、太陽光発電や風力発電の系統への接続が事実上困難になりました。彼らは先手を打っています。

一般家庭まで電気の種類を選べる自由化も、供給さえあれば「再生可能エネルギー」が一番人気となるでしょう。しかし、系統への入り口側で「シャットアウト」されたら、需要に十分に応えることはできません。

これだけでなく、「妨害工作」はもっと念入りに行われているのです。

再生可能エネルギーの電気の供給には、3つの障壁が設けられました。それは1)表示問題、2)仕入価格問題、3)託送料金となります。

再生可能エネルギーと言えない再生可能エネルギー

一つ目の表示問題とは、「再生可能エネルギー」の電気を再生可能エネルギーと呼ぶのはまかりならぬという問題です。これは再生可能エネルギー賦課金(以下「賦課金」)が関係します。再生可能エネルギーを再生可能エネルギーたらしめているのは、それが「環境価値」という特別な価値を持っているからです。「賦課金」は、この環境価値への対価であり、つまり全消費者が対価を払っている以上、環境価値は全消費者のものだというわけです。FIT電気を販売する小売会社が「再生可能エネルギー」の電気だといって販売するのは虚偽、もしくは価値の二重使用にあたるというのが、審議会で主張された理屈でした。

これでは消費者は販売されている電気が、再生可能エネルギーの電気かどうかわからなくなります。消費者団体等が猛反発し、「FIT電気」という名前での再生可能エネルギー表示はできることになりましたが、CO2排出量は「全電源平均」ということになりました。天然ガスよりCO2排出量の多い再生可能エネルギーということになるわけです。

図10 再エネ表示と回避可能費用問題

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仕入れ価格は「やみなべ」相場へ

二つ目の仕入れ価格問題は、FIT精度と深く関係しています。FITとは「固定価格買取制度」、再生可能エネルギーの電気を定額で一定期間は電力会社(小売会社) に買取らせる制度です。現在、太陽光発電の電気はkWhあたり27円で買取られますが、たとえば17円が費用負担調整機関から交付という形で補填され、残る10円が事実上の仕入価格となります。つまり、いま再生可能エネルギーは天然ガス等より安い電気なのです。

補填されるお金の原資が、消費者の支払っている「再生可能エネルギー賦課金」です。今年度は、全消費者一律でkWhあたり1.5円で、1ヶ月に300kWhぐらいの使用量だとすると、450円を負担していることになります。

この仕入れ価格を決めているのは政府で、現在は既存の電力会社の「全火力平均原価」を適用しています。石油を燃やすことが回避されたという意味で「回避可能費用」という難しい言葉を使います。既存の電力会社はそれぞれ、発電所の数や運転状況によって「全火力平均原価」の数字は違います。したがって10電力会社で、再生可能エネルギーの仕入れ価格は違うことになっているのです。

この仕入価格が、来年度からは「電力取引所」の市場価格にされることになりました。2016年度からは完全自由化で、東京電力も生まれたての小さな新電力も「同格」。同格の一方の火力平均というのはスジが通らぬという理屈です。別の指標はないかということで、採用されたのが「電力取引所」の市場価格です。たしかにドイツ等では取引所価格が仕入価格になっています。

ただしドイツの電力取引所は全需要の40%くらいのシェアなのに対し、日本のそれはたった2%の非常に不安定な市場です。乱高下の危険もあるし、高止まりすることも推定されています。結果的に、来年度から、再生可能エネルギー電気の原価は、出たとこ勝負の「やみなべ」状態になり、おそらく平均して5円から6円は高くなるのではないかと予想されています。

家庭の電気にコストをしわ寄せする託送料金

そして三つ目の障壁が託送料金です。送電網(系統)の使用料金である託送料金は、家庭用と高圧、特別高圧で極端に違っています。各電力会社ごとに異なり、需要家や電源ごとにも細かく違っているのですが、ざっくりとkWhあたりで見ると、図11のように家庭用で9円、高圧で4円、特別高圧で2円です。送電部門の費用の大半を家庭部門に押し付けている構図が明らかですが、審議会などの議論では、ほとんど異論も出されず素通りしました。

図11 低圧電力に負担を押し付ける託送料金

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しかも、この託送料金の中には、純粋に送電のためにかかった費用だけではなく、原発関連のお金(つまり発電側の費用)まで組み込まれています。図12は、審議会に提出された託送料金の内訳ですが、「使用済燃料再処理等費」と「電源開発促進税」というのがありました。前者は過去に発電された原発の使用済核燃料の再処理費用、後者は原発立地自治体に電源立地交付金などとしてばらまくためのお金です。消費者になんの断りもなく、こんなことが行われているのです。消費者はもっと厳しく監視し、声を上げなければならないのではないかと思います。

図12 不透明な託送料金の費用の内訳

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あの手この手の再エネ包囲網

さて、仕入価格が高止まりし、託送料金が高額で据え置かれれば、来年度から小売完全自由化といっても、一般家庭で再生可能エネルギーの電気を購入しようとすると相当に高い単価でないと入手できないだろうと思います。

そもそも再生可能エネルギーの供給自体がまだ少ない(全需要の4%程度)上に、そのほとんどは既存の電力会社とFIT契約を結んでいる状態です。なかなか新電力へと契約を切り替える動きはありません。

さらに新電力が再生可能エネルギーの発電所と契約しFIT価格での買い入れをするとなると、まずは原価の2倍、3倍もの価格で仕入れをしなければなりません。費用負担調整機関からの「差額」の補填は3ヶ月後になりますので、相当に資金力がないと大量の再生可能エネルギーを扱うことができません。

そもそも、どんな小さな小売会社も30分同時同量という電力供給ルールを守らないといけませんから、「変動電源」である再生可能エネルギーだけを持っている小売会社は、このルールを守ることが困難です。守れなかった場合には「インバランス料金」という名の罰金が待っています。

まさに、あの手この手の再エネ包囲網となっていますが、2020年の発送配電の分離(電力システム改革のクライマックス)までまだ4年あります。消費者が本当に自由な選択をできるようにするために、しっかりと電力システム改革の流れをレビューし、適確に反論したり、対案を提案したりする必要があるだろうと思います。

託送料金については、政府の認可制となり、ちょうど今パブリックコメント募集の最中です。実際に認可申請書などを読むこともできますが、中身は素人がわかるように書かれていません。それでも、なぜ原子力の費用が入っているのか、家庭用と産業用の託送料金がどうしてこんなに違うのか、「それはおかしい!」という基本的な意見を発することはできます。是非チャレンジをしてみてください。

意見募集のURL : http://www.meti.go.jp/feedback/index.html#pub1

第5章 再生可能エネルギー100%の電気は買えるの?

第4章 電力自由化と再生可能エネルギー” への3件のコメント

  1. 電力自由化にあたり、再生可能電力を主力としている会社を選ぼうと探していたのですが、なかなか見つかりませんでした。
    貴社のHPのお蔭でその理由がわかりました。ありがとうございました。
    最近GWECから世界の風力発電能力が原子力発電を追い越したとの公表があり、衝撃を覚えました。
    風力発電ができない理由ばかり並べている内に、日本は大きく出遅れ、大きなビジネスチャンスを逃してしまったようですね。
    巻き返せるといいのですが。
    将来、貴社から電力を購入できる日を楽しみにしています。
    Q1.神奈川県伊勢原市在住ですが供給の予定はありますか。
    Q2.第4章にパブリックコメント募集の記載があり、対象のURLを確認しましたが募集は終了しているようでした。可能でしたら、件名を教えてください。

  2. Kibouさま、コメントありがとうございます。また、返信が遅れましてすいません。ここに書いてあるパブリックコメントは託送料金についてのものなので、今年の1月のものです。こちらに、パブリックコメントの結果集計があります。
    http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620116012&Mode=2
    電力供給については、もう少し時間は必要ですが、実際に行う場合には、伊勢原市含め神奈川県、東京電力管内は、まずは対象になるだろうと思います。

    なお、生活クラブの「季刊・社会運動」という雑誌に、ここで書いているような内容をまとめ掲載されておりますので、よろしければお読みください。
    電力自由化の状況は刻々と変化していますので、今後も、最新状況をまとめ発信していきたいと思います。(竹村)

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