第5章 再生可能エネルギー100%の電気は買えるの?

それでも、道は必ずある

2016年4月から、いよいよ電力の完全自由化。これでやっと再生可能エネルギーの電気が買える・・と思っていた皆さんは、私の第4章の文章を読んでがっかりされたかもしれません。でも、ドイツでもスペインでも、同じような過程を経て、今日の再生可能エネルギーが電力供給の50%を占めるような状況をつくりだしているのです。まだまだこれからです。

再生可能エネルギーにとって、系統(送電網)への接続制限、30分同時同量ルール、既存電力会社の寡占状態、再エネ表示問題、仕入れ価格「やみなべ」相場、託送料金問題などなど、問題山積ですが、問題が明らかになれば、実は解決する道も見えてくるのです。

電力小売完全自由化を前にして、電力小売に新規に参入する「新電力」の登録は800を超えたと言われます。その中で実際に電気を売っている会社は100もなく、来年からの低圧小売を含めて事業申請し、承認された新電力はまだ40社程度です。事業申請するには、供給側発電所を持ち(または契約し)、需要側の顧客を持っていなければなりませんし、その需給調整を行う仕組みを持ち、それを安定して動かしていくだけの資金力も持っていなければなりません。

したがって、現状では、再生可能エネルギー100%の電気を売りたいという大きな志があっても、チャレンジできない事業者がいっぱいだろうと思います。

FIT電源の買い取り義務者変更

そして今頃になって、新たな大変更が加えられようとしています。これまでは電力小売事業者が買い取ることになっていたFIT電源からの電気を、すべて送電会社が買い取る方式に変更することになりそうなのです。(図13)

図13 FIT再エネの買い取り義務者変更

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これは、大きな変更で、いきなり送電側で石炭や天然ガスと混ぜられてしまうので、再生可能エネルギーの電気としての分離はできなくなります。送電会社は、その電気を「電力取引市場」に出しますが、すでに「混ざった電気」となっているので「再生可能エネルギー」としての評価はできないものとなっています。
いやFITなんだから、もともと「環境価値」なんてないんだ・・ともいえるでしょうが、少なくともFIT太陽光とかFIT風力とか呼ぶことは認められていたのに、それも吹っ飛びます。
逆に、小売事業者には、インバランスリスクもFIT価格での買い取り負担も、回避可能費用の「やみなべ相場」もなくなりますので、営業的なリスクは減ります。だから、「これは小売事業者のためなんだよ」と言われるかもしれません。
しかし、小売事業者が「再生可能エネルギーを売る」という道はほとんどこれで閉ざされました。あるとすれば「非FIT」の再生可能エネルギー電源からの調達だけ。相対取引の道は残されますが、採算性を度外視して非FIT価格であえて販売する発電所がいったいどれだけあるでしょうか?
小売事業者側は、困難な再生可能エネルギー販売のために大変な準備を強いられた上にバッサリ切られた・・という感じでしょうか。

だから、消費者から「パワーシフト」宣言!

さてタイトルの「再生可能エネルギー100%の電気は買えるの?」ですが、このままでは「ほとんど買えません」となります。非FITの再生可能エネルギーが多少販売されるかもしれませんが、多くのニーズに応えることはできないでしょう。別に100%再生可能エネルギーの電気を求めなくても、FIT制度は再生可能エネルギー全体を増やす制度なんだという意見もあります。
ドイツでは確かにFITで供給される電力の25%が再生可能エネルギーになりました。そして、再生可能エネルギーの伸びを制限するという政策に転じています。日本ではまだ、大規模水力を除けば再生可能エネルギーは供給電力の4%程度に過ぎません。それなのに、もうドイツの真似をしようとしています。再生可能エネルギーを増やすのではなく、押さえ込むことを目論んでいるようにすら見えるのです。
これを変える力は、消費者側にあります。消費者側から「これでは選択権がない!」「もっと再生可能エネルギーの電気を選べるように!」という声を上げることで、供給側の大胆な変化を求めることができます。消費者の声は「好き嫌い」ではなく、まさに「需要」だということです。

既存の電力会社が、今やっている「妨害」の真の目的は、その消費者の再生可能エネルギーの電気を求める努力をあきらめさせることなのではないでしょうか。あきらめず、声をあげ、一歩一歩詰め寄っていくという必要があります。その第一のステップが図14の「パワーシフトキャンペーン」です。

図14 パワーシフトキャンペーン5-2

パワーシフトキャンペーンは、お金がなくてもできます。
自分は「再生可能エネルギーの電気が使いたいんだ!」ということを宣言するキャンペーンです。
詳しくはこちらのURLを
http://power-shift.org

宣言数はまだ2000に届いていません。一桁も二桁も足りないのではないでしょうか?まずは、この宣言を2万にし、20万にすること。自分が宣言するだけでなく、まわりの人にも紹介し、宣言数を増やしましょう。その宣言数をメディアやSNSで拡散しつつ、再生可能エネルギー電気へのニーズが大きいということをアピールしましょう。

「パワーシフトキャンペーン」では、再生可能エネルギーを購入したいというニーズを持つ皆さんのため「事業者紹介ページ」も作っています。
いまは5つの事業者ですが、これはだんだん増えていくと思います。第4章に書いたように、いきなり再生可能エネルギー100%は難しいかもしれません。しかし、それを目指そうとしている事業者を、ぜひ皆さんの力で応援してほしいのです。

多少は高くても買う!という応援

応援の一番は、実際に「購入する」ことです。既存の電力会社から新電力への切替申請は来年(2016年)1月には可能になります。既存電力内での切替作業はそれほど大した作業ではないので、手続きさえ整えば4月からの切替も可能だと思います。ただ、チャレンジャーの小売事業者の準備はなかなか大変で、4月からの小売開始には間に合わないかもしれませんし、できても最初は再生可能エネルギー100%の電気は提供できないかもしれません。他の電気より高くて!その上に「化石混じり」か!ということがあってもちょっとは大目に見てやってください。

ドイツでは電力自由化に際して、100社が新規参入しましたが生き残れたのは4社だったそうです。その最大の原因は、託送料金を釣り上げられたからと言われています。送電会社に対する規制が緩く、自由に託送料金を設定できたからです。当然、その後にこの託送料金は厳しく規制され公平なものにされたそうです。
そんな中で生き残った一つ「ナチュアシュトローム」という会社は、なんとか1万人の顧客を最初に獲得できたので、この荒波を乗り越えられたと言います。再生可能エネルギーの電気だけを供給するというのが、発足当初からのコンセプトでした。託送料金が適正になった後は、順調に顧客を伸ばし、いまでは24万人の顧客を抱える会社となっています。
これとは別に、ドイツでは、自治体が公共サービスを提供する公社的な「シュタットベルケ」があります。約900のシュタットベルケが存在し、そのほとんどが電気の小売供給も行っています。日本でも図15のように、いくつかの自治体が電力小売参入を打ち出しています。地産地消の可能な、再生可能エネルギー資源に恵まれた自治体が多いです。シュタットベルケも電力自由化に際して、いろいろな困難を抱えたはずですが、それを乗り越えることができたのは、地域の人たちが、シュタットベルケを(電力小売会社として)選択し続けたからです。単に価格だけではなく、いろいろな日常のその他のサービスやサポートが大きかったと言えます。
日本も「都市型」「地域エネルギー型」の二つに分かれるかも知れませんが、それを存続させるのも終わらせるのも、消費者にかかっていると言うことができます。

図15 日本でも電力小売をめざす自治体・市民が続々・・

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新電力の手に発電所をもっと!

そして最後に発電所!です。図16のように、いまは、再生可能エネルギーも含め、発電設備の98%以上を既存の電力会社(10の大手電力、電源開発、日本原電)が保有しています。その状態をそのままに、自由化といっても、絵に描いた餅です。そもそも、ゾウとアリなのですから、競争にはなりません。
これを適正な競争状態にするには、経産省は大手電力の発電所を競売にかけるなりして、新電力もしく他の発電会社に売却することを義務付けるべきです。でも、かりにそれが実行されても、そのほとんどは化石燃料の発電です。

図16 日本の発電所の所有比率

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それならば、私たち自身の手で再生可能エネルギー発電所をどんどん作るというのが、もう一つのオプションでしょう。大手電力会社も政府もその気がないのであれば、いまがチャンス。小水力発電やバイオマス発電、そして、ほんとうはもっとも安定し安価な風力発電にチャレンジしましょう。
イージーパワーは実はそのために設立した会社です。金融機関にもお世話になりますが、多くの市民の皆さんの直接の支援にも期待をしています。第3章の「ポテンシャル」で書いたように、日本の再生可能エネルギーと省エネルギーの経済効果は300兆円を超えます。市民マネーを動かして、まず、その数%でも達成を見せたら、日本中の流れが変わるでしょう。もう、そこまで、そんな時代がやってきているのです。

第5章 再生可能エネルギー100%の電気は買えるの?” への2件のコメント

  1. 再生可能エネルギーを抑え込もうとする既存電力の圧力が強いことがわかりました。経験上のデータでは南面の屋根に4~5kWの太陽光パネルが載せられる住宅なら、省エネ(LEDや省エネ家電を使うだけ)と蓄電システム導入を実施することで電力の自給が可能になることが分かって来ています。建売住宅ではこの電力自立住宅が増えていますが、既存住宅でもこれを進めることで既存電力には需要家が減るという脅威になると思われます。これを武器に既存電力の圧力に対抗して行く事は出来ないでしょうか?こう言う電力自立人はバックアップ電力契約として自然エネルギー発電を選ぶでしょうから。

  2. nakkyさん、どうもありがとうございます。電力自立住宅を武器に既存電力に対抗する・・。面白いかもしれませんね。FIT価格が下がってきているので、自立=自家消費型の方がコスト回収が早いのは確かです。バックアップが必要になるのは夜だと思いますので、その発電所(水力か風力かバイオマス)をみんなで出資しあってつくる・・というのはどうでしょうか。

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